えとりんご

観劇の記録。ネタバレご注意を。この橋の向こうにジャコブ通り。

ジャック・ザ・リッパー ②アンダーソン×ポリー

ジャック・ザ・リッパー(JTR)レポの続きです。今回は私的イチ推しキャラであるアンダーソンとポリーのシーンについてです。(加藤和樹アンダーソンです。)今回も盛大なるネタバレなのでご注意ください。

アンダーソン×ポリー

とっくに終わっていると言いながら、お互いに確実に心を残している二人。何があったんでしょうね。
アンダーソンは街でポリーに出会えば、「いつ終わるの」「何が!(食い気味)」とちょっと険悪なムードで突き放してるんだけど、一人になれば「あの日の愛を夢に見て」「馬鹿な願いか」と歌っているぐらいだから、今でも大切にしまっている思いがあるんでしょう。
そもそもアンダーソンは、警官としての公の部分でも影というか傷を背負っている感じが滲み出ているんだけど、このシーンでは私の部分でもいわくありげな過去があって不器用な男であることが決定的になり、期待値爆上がりだったわけですが、この後の展開が期待を超える不器用オブ不器用、切なさオブ切なさで悶絶しましたですね。

ポリーはポリーで、「どういう風の吹き回し?」なんてちょっと突っけんどんな台詞とは裏腹に、会いに来てくれた嬉しさが顔に滲み出ちゃう乙女心が本当に可愛い。で、そのあとの「なんでもよ」の破壊力たるや…。

   ポリー、頼みがある。だから…
   OK。
   何がOKなんだ!
   なんでもよ。な~んでも。

何も聞く前から「なんでもよ」って…ねぇ。何だろうな~。相手がダメな男でもいい男でも、なんでもよって言えちゃう相手っていますよね。(います…か?)それってさ、誰にでもそう言う女なんじゃなくて、相手がアンダーソンだから、有能なアンダーソンでも(←きっと昔はそうだっただろう)堕落したアンダーソンでも、相手がアンダーソンだからその答えなんだよね。

アンダーソンはさ、おとり捜査の協力を頼むならポリーしかいない、きっとポリーなら引き受けてくれるって思って会いに来たんだろうけど、予想を超える海の広さの答えが返ってきて撃ち抜かれてるんだよね。自分が頼もうとしていることの重大さを考えたら、何でもOKと言ってくれたポリーに対して、返す言葉がなかったんだろうな。

ゆっくりうなだれるように俯いて首をふるふるっと横に振り、髪をぐしゃっと掴んだ後、テーブルに置いた手で拳握ってわなわな…っと。あぁ〜知ってたじゃないか。ポリーはこういう奴だって。知ってて来たんじゃないか。結局、今も昔もポリーの優しさを頼ってしまう弱くてずるい自分と、犯人を捕まえられない自分への腹立たしさを感じてるんだろうね。あの背中で見せるシーンは切なさ全開で素晴らしかったです。表情も見てみたい…でも背中で泣いているのがあのシーンの良さですよね。

余談ですが、JTR男性キャストの対談があった時に(テレビだったかアフタートークだったか)、このシーンというか、この後のポリーの歌のシーンのことを話していたことがありましたが、一様に、あのポリーがね…いいんだよね…毎回袖で泣いてる、などなどと話していたことを思い出しました。私も、アンダーソンに堕ちるかジャックに堕ちるかと思いながら見に行った初日、ポリーにガツンと堕とされましたからね。

男性の方がより強烈に感じるんだと思うので、実際男性の皆さんにもあのシーンを見てもらって、「なんでもよ」のパワーワードとともに、在りし日のノスタルジックな恋を思い出してほしいですね。(ただ、残念なお知らせですが、女性の大半は元カレの記憶は見事に抹消しています。etorin調べ)

あと、「雪だわ!」「灰だ」のマジレス構文が楽しすぎるんだけど、初々しくお付き合いしていた若かりし頃も、ポリーのおちゃめな発言に警官らしく説教くさいマジレスして、「そんなこと聞きたいんじゃないわ」ってポリーがふてくされ、「何がおかしいんだ!」とアンダーソンが眉をひそめる微笑ましい姿を想像したりしました。好物なので永遠に繰り広げていてほしいです。

それはそうと、最後にアンダーソンは「悪かった!君に伝え忘れたことがある!」って言うんだけど、そりゃそうだ、忘れたもなにも何も伝えてないだろ~が!!せめておとり捜査の作戦は伝えてくれー!なんで何も話さずに、目印の花だけ渡しちゃうんだよー!ダニエルも特大フラグ立ててたじゃないか。「この計画は娼婦にも伝えないと~。もしも失敗すれば…」って。ポリーも、アンダーソンが意を決して「頼みがある」って言ったのに、肝心なその頼みの中身をまだ聞いていないことに気づいてくれ~!

そして、作戦以外にも伝え忘れてることあるよね。「これが終わったらまた笑いあえる」と夢見た馬鹿な願いを聞きたい。あの日の愛を夢に見ていて、ポリーも同じ景色を見ているのに、アンダーソンは最後まで苦悩の表情なんですよね。おとり作戦への躊躇から来る苦悩だけじゃないものを感じるけど、思いは溢れていても、その先には進めない障壁があるんですかね。絶対に超えられない障壁ではなく、何かが終われば笑いあえる未来がありうるのか。

ポリーはそれを分かっているのかいないのか分からないけど、酔っ払いのたわごとにしてさっと引く。そしてアンダーソンもぐっと耐えて引く…。いやいやいや、ちょっと待て〜!酔っ払ったせいにしたときの言葉は本心に決まり切ってますから!アンダーソンはそこで一緒に引いてる場合じゃないんだよ! チャンスだ~!ひるむな~!!今しか~ないんだっ!!! ここでセクシー担当のジャックを創り出してほしいアンダーソンでした(話変わります)。全くダニエルの盲目的無邪気さを半分くらい分けてほしくて悶絶しまくりでした。

でもそう言えば、ダニエルは恋愛未経験のはずなのに、よけようとするグロリアの手をさっとつかみ、自分の胸に当てて鼓動を聞かせてたよね。さらには、ダメ見ないで〜って本気で逃げてるグロリアを最後にはがっちりホールドしてましたよね。なんとも末恐ろしすぎませんか?

まぁそれは置いといて、と!に!か!く!アンダーソンの不器用オブ不器用が炸裂してましたね。ポリーの歌い始めでは、照れ隠しに髪をかき上げたり、ちょっと不機嫌に眉ひそめたり、ちらりと振り返ったり。最後には衝動的にキスにいくけれども直前でかわされ。抑えようとしても溢れ出てしまう情感が大好物なのでアンダーソンが刺さりすぎました。ありがとうございました。

ラストでポリーが髪に挿したはずの赤い薔薇を胸に握っていたのは、最後の瞬間にアンダーソンに守ってもらいたくて手に取ったのかな…。そう考えると切なすぎるけども、ポリーは最後に伝えたいことを伝えて幸せな思い出に浸れたのがせめてもの救いだったよね。

アンダーソン×ポリー、暗澹としたJTRのストーリーの中で、明るくはないんだけどじんわりと温かい光を与えてくれる切ない大人の恋をありがとうございました。