えとりんご

観劇の記録。ネタバレご注意を。この橋の向こうにジャコブ通り。

マタ・ハリ⑤ ラドゥー2 ~あなたがいるから眠りを忘れた

 マタ・ハリ考察のラドゥー編、まだまだ熱く続きます。毎回のことながら、ネタバレでしかありませんのでご注意ください。

色気
 正義と愛の板挟みに苦悩する男が好みと言いましたが、すみません、嘘をついていました。正義と愛の板挟みに苦悩するイイ男が好みでした…笑 何やかんや言って、ラドゥーが心を捉えて離さないのは、圧倒的な色気なんですよね…。
 私は大昔から可愛いとかかっこいいよりも、色気を重視してきたんだなと最近実感しているんですが、加藤和樹さんラドゥーの色気がツボに刺さりまくりってしまいました。軍服がいいとかおうちガウンがいいとかではないんですよね(いや、それも否定しませんが)。中の人が元々フェロモン全開なのもあるんですが、ラドゥーはまず立ち居振る舞いがいいんです。大佐まで昇り詰めた自負や首相の娘婿というステータスからくる自信が、表情や姿勢、仕草や目線に滲み出ていますよね。心の内では色々迷いもあるんですが、立っていても歩いていても堂々たる威厳がある。色気って外見だけじゃなくて、内面が充実して初めて備わるものだよなと全世界の男どもに言いたい。また、ともすると、そういった自信は高圧的で周囲を見下す印象にもなりがちですし、そのように感じる場面も多少あるようには思いますが(キャサリン相手の会話など)、絶妙にそのラインを行きすぎず、近寄りがたい孤高のリーダーが醸し出す色気をまとっていたと思います(もう既に大好物)。あと、私がキラキラプリンスが苦手なのは、歯が浮くような甘い台詞が苦手で、キュンとする前にうさん臭いわ~っと思ってしまうからなんですが、ラドゥーはマタへの思いをずっと抑え込んでいて、何なら自分でもその気持ちを認めていないんですよね。それが抑えても抑えても溢れてしまって、徐々にコントロールできずにだだ漏れてきてしまうわけですよ。抑えているのに溢れてくる感情は紛れもなく本物なわけで、そのむき出しの感情をぶつけられると、すみません、こっちも制御不能です!!ってなりますね笑 特に「なぜ心きしむのか」が絶品で、ぎゅ~~っと心掴まれます。そこからの「二人の男」!沼落ちの軌跡でも書きましたが、私はこの歌が真正面から突き刺さり幕間で立ち上がれなくなりました。

 想像できる君の心

 夢中なんだろあの香りに

とまぁ何ともねちっこく、アルマンの気持ちに探りを入れていくラドゥー。…だったはずなんですが、

 全てが色めく彼女といると
 お前も同じはずだろ

アルマンじゃなく、自分のことかーーい!!ってなりますね笑笑 そして、目を閉じ妄想に耽る大佐が爆誕するわけです。もうこうなると大佐も止まりません。見ているこちらも、劇場にいるから辛うじて我慢していますが、家で見ていたらふぇふぇふぇふぇ…と変な声を出して、膝を思いきり叩きまくるだろうなというぐらいにはテンションマックスになってきます。
 白を切り続けていたアルマンも、宿泊リストを突き付けられた途端に反撃に出ます。マタの愛を手にしている男の余裕なのか、リストを握りつぶしたり、破り捨てたり、大佐の肩をポンポン叩いたりと、上司をとんでもなく煽る煽る。ラドゥー推しですが、ここはアルマン行け~!ってなりますね笑 パッシェンデール送りを告げた後には、もはや二人とも隠すつもりなど一切なく、自分の熱い思いをぶちまけます。これはラドゥーだけでなくアルマンにも言えることなんですが、「二人の男」の最大の魅力は、最初は二人ともしれっとマタへの気持ちを隠しているのに、煽り煽られしているうちに、どうしようもなく沸騰して溢れ出てきてしまって爆発させるところだと思うんです。大事なところなのでもう一度言いますが、隠しているのに我慢できずに溢れてくるってところが最大のツボなんです。最後にはもう上司とか部下とか関係なく、ただの男としてなりふり構わず自分の思いを全力で殴りつけあって、ついでに二人がかりで色気もフェロモンもボコスコ投げ散らかしてくるので、当然我々は思いきり被弾し、再起不能になるというわけです。

 そこで終わるわけではなく、2幕にはさらなる難所(?)おうちラドゥーが待ち構えています。誰がおうちラドゥーって命名したのか知りませんが、キャストの方々もおうちラドゥーって呼んでるようで嬉しくなりますよね。あんなガウン着ておうちでウロウロしてるだけで罪ですよね。その上、デキャンタでウイスキーとか、緑のウニャっとしたソファーとか、小道具が効きすぎててアカンやつです。
 ラドゥーは夜分に自宅を訪ねるマタに驚きつつも、「あなたの力が今すぐ必要なの!」なんて言われて思い切り自尊心をくすぐられてしまいます。まぁ~、あの時の顔はホントに絶品ですよね。「いいだろう、来てくれて嬉しいよ」…その声!その目!!(byアンナ) バンバンバンバン!もう膝もひじ掛けも叩き割りたい(劇場です)。飛び上がるほど嬉しいくせに、がっついたりはしないで、ゆっくりと腰を取ってソファーにエスコート。ガウンをファサーってなびかせてひざまずいたり、ソファーに膝をついて抱きしめたりとか、ありゃ~何ですかね?!もう自分の手の中にあることを確信して、あとはゆっくりじっくり自分のものにしてやろうっていうドS魂胆ですかね。あの~ラドゥーさん、マタは手玉にとりにきてますよ~。マタの頼みは、アルマンの消息を知りたいという、ラドゥーの夢を打ち砕く内容だったんですが大丈夫ですか~?アルマンの居場所を教えるのと引き換えに、先に取引してもよかったのに、何でラドゥーは先にカード切っちゃったんですかねぇ。舞い上がっちゃって余裕がなかったのか、それともここで俺の魅力に落ちないはずがないという勝算でもあったのか。余計なことはさっさと済ませて、ゆっくり本題に移りたかったんですかね。その余計なことがマタにとっては本題で、あなたの本題はマタにとっては余計なことなんですがね。とにかく、以前のマタならいざ知らず、アルマンとの本物の愛に生きる今のマタはたとえかりそめでもラドゥーを受け入れるつもりはなかったわけです。その強い拒絶にあって、ラドゥーはビーストモードへメタモルフォーゼ。先ほどの余裕はどこへやら、完全に力づくでマタを押さえにかかります。「選べばいいんだ、目の前の男を!」選ばれてない立場、選んで欲しい側の立場なのに、選べばいい!と言える俺様メンタル、最強すぎませんか?!(すみません大好きです) ここはマタをソファーに投げ倒した上、シャツのボタンを開けるという暴挙に出るわけですが、東京前楽ではガウンが落ちるというちょっとしたハプニングがあった結果、サスペンダーまで外してガウンを投げ捨てるというとんでもない大量殺戮作戦に瞬時に切り替え!この日はリアルタイムで配信もされていましたので、全国あちこちで悲鳴が響き渡るサスペンダーテロ事件として名を刻みました(刻んでません)。私は劇場で見ていましたが、オペラグラスを握る手がガクガク震え、マスクの中でうそっ、ちょっ、ひぃ~~~っと声なき声を上げ、天井を仰いで昇天しました。次のマタの歌は完全に聞き逃しましたね。真後ろのお客さんにも、こいつ大佐にやられたなと思われていたことでしょう。


 はい、ではここで本日の復習。もうさすがに優秀な皆さんはラドゥーの定理を覚えてくれたと思いますが、最初は余裕たっぷりドSオラオラ路線全開なのに、途中から溢れ出る感情を制御できなくなって、余裕なくして狂うのがドツボofドツボなんですよ。最初っから余裕なく迫られても気持ち悪いだけだし、最後までドS突き抜けられても勘違い野郎だし、最初から甘々に愛を囁き出すのはうさん臭いし、意外に自分のストライクゾーンは狭い気もするのですが、ラドゥーはその絶妙なラインをど真ん中どストレートに剛速球で突いてきたので、刺さりまくって悶絶しました。

 …1の苦悩編より更に長編スペクタクルとなってしまいました笑 闇落ち編については更に次回へ続きます。

 

マタハリ考察一覧はこちら

マタ・ハリ① ~鏡の中にあなたを見るまで - えとりんご

マタ・ハリ② マタ 〜見れば魂奪われ - えとりんご

マタ・ハリ③ アルマン 〜連行してくれるの? - えとりんご

マタ・ハリ④ ラドゥー ~なぜ心きしむのか - えとりんご

マタ・ハリ⑤ ラドゥー2 ~あなたがいるから眠りを忘れた - えとりんご

マタ・ハリ⑥ ラドゥー3 ~あの眼差しにとらわれて - えとりんご